1日10回潅水可能な第一世代の日射比例潅水コントローラー(トマトバッグ栽培潅水プロ1型 TB-227-1)
トマトバッグ栽培潅水プロ1型(TB-227-1)の開発の経緯
2007年頃でも、生産量を重視したトマト栽培が主流であり、ミニトマトの糖度はBRIX値で5%に満たないものが多かった。当時、大沢高志博士(元静岡県農業試験場長)は、生産量を確保しながら付加価値の高い高糖度のミニトマト(BRIX値8%以上)を目標とする「トマトバッグ栽培潅水プロ(TB-227-1)システム」を開発しました。
- 高糖度のトマトにする潅水の基本は、水をかけ過ぎないことです。トマトの水分吸収をきめ細かく制御することが可能な潅水コントローラーの開発を大沢高志博士より当伊達潔技術士事務所に依頼されました。
- この当時、土壌水分量を測定することは可能でしたが、土壌水分を測定するセンサーに問題がありました(センサーの応答速度が遅いあるいはセンサーの汚れなどから長期間センサーをメンテナンスフリーで埋設できない)。このため高糖度を目標とした栽培現場できめ細かい制御に使用することができませんでした。
- 蒸散量が多いと土壌水分量は大きく減少します。昼間の蒸散量は日射量と相関関係が高いことが知られていた。そこで日射量を測定して、その値によって潅水量を制御することに着目しました。
日射比例潅水コントローラー(TB-227-1)の特徴と制御例
この「トマトバッグ栽培潅水プロ」の要である日射比例潅水コントローラーは、1日に10回潅水(潅水時刻を設定)することができます。各潅水時刻とその時に潅水する秒数(電磁弁を開く秒数)を電磁弁ごとに設定します。潅水する秒数は、晴天の日を想定して決定することが必要です。標準で8つの電磁弁の制御を農家の方が潅水量を個別に指示できるように設計しました。
- 日射量により潅水量を制限するために、1分ごとに日射量を測定し、そのとき曇りかどうか判定します。曇りかどうかの判定は、ユーザーが曇りと考える日射量を下回ると曇りと判定します。
- 曇りの程度を5段階(0~20%、21~40%、41~60%、61~80%、81~100%)に分け、段階ごとに100%(ほとんど晴れ)、80%、60%、40%、20%(ほとんど曇り)のように希望する潅水制限%を設定します。各潅水時刻に曇りの程度を計算し、晴れを基準に設定された潅水秒数(ここでは100秒)に制限する係数を掛けた秒数を潅水します。
- たとえば、潅水時刻に計算した曇り程度が90%(ほとんど曇りか雨である)であれば、ここでは20%と設定しているので100秒×(20÷100)=20秒潅水することになります。0%と設定していれば潅水しません。
- トマトバッグ栽培潅水プロは水をかけ過ぎないようきめ細かく設定でき、しかも急な日射量の変化(午後から雨など)があっても自動で潅水量を制限できるようになりました。
注)トマトバッグ栽培潅水プロ1型は、元静岡県農業試験場長大沢高志博士のご協力で開発しました。